シンセサイザーデュオ、CRYSTALのニューEP!
マティアス・アグアーヨをフィーチャーしたシングル『君はモンスター』以来となる東京のカルトシンセサイザーバンドCRYSTALのニューEP。ソニック・ザ・ヘッジホッグやエコー・ザ・ドルフィンのようなビデオゲームの影響は広範囲に広がっていますが、このカートリッジ・クラシックのノスタルジーは彼らの最新作『Ecco Funk』にも反映されています。
3年ぶりに新たにデュオとなって戻ってきたCRYSTALは、エコー・ザ・ドルフィンの水のような世界にインスピレーションを求めるだけでなく、ウィリアム・ギブスンの作品(具体的には1981年の短編小説『記憶屋ジョニィ』というよりも、キアヌ・リーブスが主演した95年の映画『JM』)にも触れ、レトロフューチャーなサイバースペースの中に自分たちの液体のような世界を切り開いています。
このゲームの影響をダイレクトに受けたタイトルトラックは、イルカのような高音のバーストと、シンジラレナイベーシストによるシンジラレナイ指さばきのベースのグルーヴで幕を開けます。「Ecco Funk」は、歌詞の中にキーボード ・ソロのファンキーなスプラッシュが散りばめられており、セガ・メガドライブの名曲をもう一度プレイしてみたいという願望を表現します。
ディスコベースが疾走するリズムの「Do It Again」にはエレクトリック・ジャズの新世代Niels BroosとVincent Ruizが参加。キラキラと輝くアルペジオと荘子の英語語りが電脳空間を泳ぐサウンドトリップのようです。
三宅が参加したRBMAで話題となった11分間に及ぶスペースジャムを元に作られた「Genesis Jam」は、柔らかでドラマチックなコードセクションとアシッドシンセの対比が印象的な一品。再登場するシンジラレナイベースソロと健気に戦う三宅のチョッパーベースとヴォコーダーは、Zoolook時代のジャン・ミッシェル・ジャール、あるいはFuture Shockのハービー・ハンコックらの影響を感じさせます。
頭をふらふらとさせるような強烈なシンセサイザーと、宇宙空間に響くクリスタルなメロディに彩られた「Crystal Gates」をくぐり、少しだけファンキーになったCRYSTALの最新EPは締めくくられます。
CRYSTALのEcco Funkはサウンドだけでなく、過去の世界へのシンセデュオの献身を再確認させてくれます。16ビットのコンソールはとうの昔になくなったかもしれませんが、Ecco Funkはシンセサイザーの黄金時代を新鮮に捉え、そのノスタルジアに大きな生命力を吹き込んでいるのです。
TRACKLIST
A1. Ecco Funk
A2. Do It Again (feat. Niels Broos & Vincent Ruiz)
B1. Genesis Jam
B2. Crystal Gates